【コラム】今年の最低賃金の議論の行方はどうなる!
- NAITO Yoshihiro
- 2024年8月1日
- 読了時間: 2分
今年も10月以降の最低賃金を決定する時期を迎えました。
都道府県別に定められる最低賃金は、まず、厚労省に設置された中央最低賃金審議会が引上げ額の目安を諮問して、その目安に基づいて、都道府県の労働局ごとに設置される地方最低賃金審議会がその地域の経済状況等を考慮し引上げ額を決定する仕組みになっています。
今年の中央審議会の引上げ額の目安は50円となり、最低賃金は全国平均で1054円とされました。昨年からすると約5%増となり、今春の春闘の賃上げ率とほぼ同じ率となっています。
昨年までは経済状況に応じて全国を3つの地域区分に分け、その区分ごとに目安を決めるのが通例となっていましたが、今回はその区分にかかわらず一律とした点が注目されます。
地域区分により目安に差を付けると、最も高いところと最も低いところの差(現在220円)がますます拡大することに配慮したことがうかがえます。
さてこれから注目されるのが、地方審議会の動向です。
昨年は中央審議会が示した目安を大きく上回るところが多く出ることになりました。
特に隣接する都道府県よりも1円でも多い額で決着したいという意向が強く働いたことが理由と想像されています。
そのため、最終決定の時期を遅らせる地方審議会が多くありました。
人材不足が深刻化するなかで、地域関係者は非正規で働く労働者の賃金の基準となっている最低賃金の動向に深い関心を寄せているのですが、こうした傾向は今回もさらに強まることになりそうです。
こうした地域間での「競い合い」の状況は、本来の最低賃金法が定める趣旨からは随分とかけ離れたものだといえます。
法では、最低賃金は「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して決めなければならない」とされているのです。
有識者から適切な数的根拠(エビデンス)に基づいて議論すべきだとする指摘が出ているのもそのためだと思われます。
もしかしたら、最低賃金の決定方法について新たな議論を行う時期に来ているのかもしれません。
今年の夏は例年以上の猛暑の夏となっていますが、最低賃金の議論もそれ以上に「熱い議論」になることが予想されます。その動向を注目していきたいと思います。
詳しく知りたい方は、次の厚生労働省のホームページをご覧ください。
▸厚労省ホームページ
Comments