7月3日に厚生労働省から公的年金「財政検証結果」が公表されました。
法律によって5年ごとに実施されることが規定されていて、国民年金や厚生年金の「定期健康診断」と呼ばれるものです。
これからの年金制度の内容を決めていく基本的な資料とされるため、その結果は毎回大きな注目を集めることになります。
そのなかでも、大きな注目を集めるのが、年金の給付水準がこれからどうなるかということです。その目安として用いられるのが「所得代替率」という指標です。端的にいうと、年金支給開始年齢の65歳にもらえる年金額が、そのときの現役世代の平均収入額(手取り額ベース)の何割くらいになるかを示すものです。法律ではこれが「5割」を超えなければならないとしています。
今回行われた試算では、4つのケースを想定していて、「1人当たりゼロ成長ケース」を除く3つのケースでは、現在行われている年金給付抑制の仕組み(マクロ経済スライド)が終了したときにおいて「5割」を上回ります。
例えば、標準的な経済成長を見込んだ「過去30年投影ケース」では33年後の2057年に50.4%を維持できる結果となっています。
ちなみに、現在は61.2%ですので、それでも2割程度低下するシナリオなのですが、それでも法律で定める5割を上回る結果となるのです。
もちろん、この試算結果には、様々な前提がありますので、それが想定どおり行かないこともあり得るわけですが、それについては次回の「財政検証」で引き続き点検されることになります。
この検証結果を受けて、注目されていた年金制度改革の内容が変化することが予想されます。一つは、基礎年金の納付期間を現在の40年間から45年間に延長する案が検討されてましたが、これについては「見送り」になるとされています。期間延長に対する被保険者の懸念や国の負担増などが課題となることがその理由です。
もう一つは、在職老齢年金制度の見直しが検討されていましたが、これについても見直しがされない方向とされています。対象となる高齢者が一部に過ぎないことや見直しによる財源負担増などが課題となることがその理由です。
それでは、それぞれが65歳の段階で、一体いくらの年金月額がもらえることになるのかということなのですが、それについても、検証結果に示されていて、「過去30年投影ケース」(実質賃金上昇率:0.5%)では、次のように例示されています。
現在65歳 男性:14.9万円
女性: 9.3万円
50歳 男性:14.1万円
女性: 9.8万円
40歳 男性:14.1万円
女性: 9.9万円
30歳 男性:14.7万円
女性:10.7万円
(注)年金月額は物価上昇率で現在に割り戻した実質額
これによると、現在30歳の女性は、65歳になったとき、月額10.7万円の年金がもらえるということになります。もちろん、これは平均額ですので、就労状況や所得額によって異なってくるのですが、一つの目安になるかと思います。
いずれにしても、これはモデル的なケースであることを念頭に、自身の状況を冷静に見つめて、年金受給開始後の人生設計を組み立てることが大切になります。
詳しい検証結果は、厚生労働省ホームページに掲載されていますので、ご覧ください。
▸財政検証結果の概要(厚労省ホームページ)
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