3月末は転職・退職の季節です。
転職・退職に伴って生じるのが社会保険の手続です。会社勤めの転職の場合は総務担当者が手続をしてくれますので安心なのですが、退職して手続をしてくれる人がいなくなった場合は自分でしなくてはならないので、結構大変です。
会社を退職して個人事業主やフリーランスなど自営になった場合、4月になったらしなくてはいけないことについてまとめてみました。
ここでは「健康保険」について見ていきますが、次の3つが選択肢になります。
(1)配偶者の被扶養者になる
・配偶者が働いていて健康保険に加入している場合は、この可能性があります。保険料は配偶者がまとめて支払うことになりますので、一番リーズナブルと言えます。
・ただし、要件があって、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合とされています。
(注)手続は配偶者の勤務先で行うことになります。
(2)任意継続に加入する
・配偶者が働いていないような場合は、まず検討してみたい方法です。2年間は以前加入していた健康保険に加入でき安心感はありますが、事業主が負担していた保険料も自分で支払うことになりますので、簡単に言うと保険料は2倍になります。
・要件は次の2つですが、比較的対象になりやすいのが特徴です。
▸資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること
▸資格喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること
(注)手続は加入していた健康保険組合で行うことになります。協会けんぽに加入していた場合は、都道府県の協会けんぽの支部に自分で手続にすることになります。なお、ここで言う「資格喪失日」は退職日の翌日になります。(3月31日退職なら資格喪失日は4月1日です)
(3)国民健康保険に加入する
・働いていた期間が短いなどの理由で、任意継続ができない場合はこの方法になります。基本的には誰でも加入できますが、保険料は市町村に異なっていますので、どれくらいの負担になるかは、市区町村の窓口で確認する必要があります。ホームページにも計算式が掲載されていますが、複雑で分かりにくいので、窓口の担当者に尋ねるのが一番です。
〇このなかで、気をつけておきたいのが、(2)「任意継続」と(3)「国民健康保険」のどちらの保険料が高くなるかです。結論から言うと、「任意継続」が安くなる場合が多いですが、実際には「国民健康保険」と比較してみないとどちらとも言えないということになります。
〇その理由は、「任意継続」の保険料は勤務していたときの退職時の給与(標準報酬月額)が基準となりますが、上限があって、退職時の標準報酬月額が30万円を超えていた場合は、30万円の標準報酬月額により算出した保険料になるのに対して、「国民健康保険」の保険料は、前年の所得を基準として決定されることにあります。
〇このため、退職直後はどうしても「国民健康保険」の方が保険料が高くなる傾向になるのです。なお、「任意継続」は以前は2年間は継続する必要がありましたが、その要件がなくなり途中で脱退することができるようになりましたので、1年経った段階でもう一度どちらの保険料が安くなるのかを確認するのがいいと言われています。
〇ただ、2つの制度には給付内容の違いもありますので、保険料と制度内容の両方を考慮してどちらにするか決めた方がよいことに注意しておきたいです。いずれにしても、健康、医療にかかわることですので、無保険になって全額自己負担ということにならないよう、速やかに手続を済ませておくことが大切です。
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