最近新聞などでよく見るのが「財政検証」という4文字です。
何か小難しいことのように聞こえて、自分の生活には余り関係のないことと思っているかもしれませんが、実は多くの人たち、特に中高年の年金世代には深い関わりがあります。
年金が「100年安心」の制度と言われたのは、2004年のことで、今からもう20年前のことになります。この「100年」というのには、やや誤解があって、100年持ちこたえられる制度が保障されていることを意味すると、よく言われます。
実は、この「100年」は「財政均衡期間」のことで、簡単に言えば、年金というお財布のなかで収支と支出のバランスを取る期間のことを指しています。政府としては、この期間中は、収支の均衡が取れたものにしなくてはならない義務があるとされていて、そのため、少なくとも5年ごとに、収支の現状と今後の見通しについて点検(検証)し、もし、均衡がとれないと判断される場合には、政府として何らかの対応をしなければならないとされているのです。
その5年ごとの点検作業が「財政検証」なのです。
人の身体で言えば「健康診断」、車で言えば「定期点検あるいは車検」に当たると考えたら分かりやすいと思います。
前回の「財政検証」が2019年でしたので、その5年後の今年に実施することになっているのです。
さて、今回の検証ではどんな議論がされているのでしょうか。
厚生労働省のホームページにその内容が掲載されていますが、専門用語がたくさん出ていてよく分かりません。そこで、簡単にまとめてみると、次のようになります。
〇まず、これからの少子高齢化など人口の動向や、生産年齢人口など労働力の動向、経済成長の見込みなどの要素を考慮して、様々なケース(選択肢)を想定して「年金に与える影響」を試算するとしています。
〇そのときに、前提として入れるもののなかに、これまで専門家などの意見を聴いて議論をしてきた年金制度の「見直しの方向」も入れることにしています。
〇現在、その「見直しの方向」として挙げられているのが、次の5つの項目になります。
(1)年金の被保険者となる範囲の拡大(被用者保険の適用拡大)
(2)年金の支払い期間の延長と受取額の増額(基礎年金の拠出期間延長・給付増額)
(3)年金給付額の調整方法の変更(マクロ経済スライドの調整期間の一致)
(4)年金受給高齢者が働く仕組み(在職老齢年金)
(5)高所得者の保険料算定水準の見直し(標準報酬月額の上限)
〇このなかでも、(1)(2)(4)は特に多くの人にとって関わりが深い内容になります。(2)では、国民年金の保険料を支払う期間が5年間延長する方向が示されています。
報道などでは、保険料負担が多くなることばかりが指摘されていますが、一方でその分給付額が増えることにも注目する必要があります。
今進められている作業は、この夏にも公表され、それを踏まえた検討結果が来年(2025年)に法律改正という形で国会に提案されることになります。すぐに実施されるものもあれば、一定の期間の周知や経過措置のための期間を経たうえで、実施されるものもあります。
いずれにしても、今の年金制度が100年持ちこたえる制度となっているのかどうか、分かりやすい形で伝えられ、それを皆が理解し、納得することになってほしいと思います。
それではまた!
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